十八銀行体育館に設置の画家野見山暁治氏作「コスモ」の壁画を十八銀行本店ロビー壁画に移設修復

移設前の壁画
十八銀行の体育館にあった洋画家、野見山暁治氏の壁画作品を十八銀行本店のロビー壁面に移設して修復作業を行った。

2.作品の洗浄(裏部)
画面洗浄を行い裏面の除去を行った。
過去の修理で使用され変色したボンド等は、外科メスで除去を行った。

3. 作品裏面の補強とパネルの下貼り
支持体(壁紙)の裂けなど損傷には部分的に和紙を貼り補強した。作品全面に裏打ち紙を貼り補強をした。

4.作品仮張り
周辺に補紙を付け、仮張りパネルに張り込みを
繰り返しながら、支持体(壁紙)の調整を行う。
過去に修理された壁紙はオリジナルとは異なる
様式だったので除去をして、新たに側面の壁紙
で補う。

6.作品の張り込み
作業終了後、接着剤に水分が含まれているので、
作業終了直後は支持体に波打ちが残るが、水分
の蒸発とともに徐々に張りが戻る。

7.完成
1:概要
【作品】 「コスモ」壁画 (十八銀行記念体育館)
【作者】 野見山暁治
【制作年】 1977年
【種類】 壁紙(ビニールクロス)・アクリル絵具
【寸法】 左面:高3696×幅5232㎜(壁紙9枚修理部分も含む)右面:高4086×幅4163㎜(壁紙5枚)
【所蔵者】 十八銀行株式会社
【作業期間】 2008年6月〜2009年1月12日
【作業者】 絵画修復 たけのした工房
【修復監修】 森絵画保存修復工房
【協力】 村上表具店、スタジオパッション株式会社、日本通運株式会社
この絵画は、1977年に創立100周年を記念して十八銀行記念体育館2階ロビーの壁へ、 野見山暁治画伯が現地で制作した作品である。ロビーの壁は前面、側面、後面へと折れ曲がり続いていた。地塗りは3面にあるが、描画は前面と後面のみに描かれており、遠近を取り入れた作品である。
2:作業の目的と方針
現状の絵画表現を損なうことなく移転と展示保存を行う。
移転先への貼り込み方法は、
作品保存の為、経年後の再修復を考慮して、作品を傷めることなく剥
がし取れる仕様にする。
1.作品は、画面に薄紙を貼り保護をした後に、現状の表現や形態を損なう事なく、旧壁より剥がし取る。
2.作品の洗浄を溶剤等でテスト後に行う。黴は除去し、殺菌を行う。
3.支持体を支えるパネルには和紙4層の袋貼りを行う。
4.作品の裏面にも和紙を2層貼る。
5.支持体の欠損部分は、模様や劣化経年が同類である側面の壁紙で補充を行う。
6.作品の張り込みは、移転先の壁へパネルを設置後、パネルの継ぎ目を和紙で下貼りと袋貼りを行い、
その上に作品を接着する。
支持体
・支持体は壁に貼られた壁紙(ビニールクロス)である。
・経年劣化があり、汚損、避け、破れ、剥れ、捲れがあった。下部は人の出入りの際に傷んだと
思われる損傷が目立った。
・雨漏りがあった部分(左側壁)は、縮みや剥れが顕著であった。裏面は広範囲に黴が発生して、
裏紙が腐食や変色により、強度や張りも消失していた。
また、その部分には、修理で壁紙がカッ
トされ、新たに別な模様のクロスに貼り替えられていた。黄色ボンドなどの痕跡があり、黴も発生し変色、劣化してい
た。 修理された部分の彩色は、色やタッチの違いから修理者が描き加えた
と思われる。
・壁紙には下塗りが全面にある。筆の毛が塗り込まれ残っている部分もあり、下地を塗った形跡が
読み取れる。
・全面に下塗りがあったおかげで、経年の劣化が軽減されていた。下塗りのない部分は劣化が著しく
、壁紙としての強度や張りが消失していた。
3:作品形状と損傷
絵具層
・絵具はアクリル絵具である。下地が全面に塗布されていた。
・過去の修理で加筆があった。
・制作後30年経過しているが、経年劣化や汚損はあるものの絵具層の
損傷は見当たらず、状態は良好である。
絵画修復 たけのした工房
〒854-0067
長崎県諫早市
久山台68-10
TEL.0957-56-9939
